日本製紙は島根県の江津工場で建設していた、食品・化粧品向けのセルロースナノファイバー(=CNF)の量産設備を稼働開始する。
食品添加物として製造・販売実績があるカルボキシメチルセルロース(=CMC)の製造技術を応用し、年間30t以上のカルボキシメチル化CNF(=CM化CNF)を製造する。
江津工場のCNF量産設備
CM化CNFは繊維幅が数nm〜数十nmのミクロフィブリルセルロースで、温度による粘度変化が小さい、ネバツキがない、撹拌すると時間とともに粘度が低くなるが、撹拌を止めると、元の粘度に戻るチキソ性があるなど、CMCをはじめとする従来の増粘剤にはない特長を持つ。食品・化粧品などの新規添加剤としての実用化が見込まれる。
江津工場では今回の量産設備の稼働を機に、すでに確立している「水分散したCNFを固形化する技術」を用いて、粉体でのCNFサンプル供給を本格的に開始する。
同社は今年4月に宮城県の石巻工場で、TEMPO触媒酸化法により完全ナノ分散したCNFを生産する、年間生産能力500tの世界最大級の量産設備を稼働し、機能性シート、機能性添加剤、ナノ複合材など、幅広い工業用途での利用を進めている。6月には静岡県の富士工場で、樹脂に混練することで得られるCNF強化樹脂の年間生産能力10t以上の実証生産設備を稼働。現在、補強材料としての用途開発を進めている。
江津工場では長年、木材成分から溶解パルプや機能性ケミカル製品を製造し、木材の総合利用を推進してきたが、今後は、既存のセルロース事業の幅を広げる新規添加剤用途で、本格的にCNFの市場を開拓する。