惣菜盛り付けロボが食品工場で活躍中
安定生産には多品種変量への対応がカギ

 (一社)日本惣菜協会(東京都千代田区、平井浩一郎会長)は惣菜盛り付けロボットの研究開発を経済産業省と官民一体で進め、製造現場での運用に成功したとこのほど発表した(既報)。惣菜・弁当盛り付けロボットが実際の製造ラインで3月から稼働している。

 東海地区を中心に約230店舗を展開するマックスバリュ東海(静岡県浜松市)はデリカ長泉工場(同県長泉町)にポテトサラダの盛り付けロボットを3台導入した。

 生産ラインではロボットが一列に並んで計量・盛り付けを行い、人間は保管庫から食材を取り出したり、惣菜・容器を補充したりする「みずすまし」のほか、トレーのふた閉めや完成品の箱詰め作業を行っている。作業はこれまで7人体制だったが、半数以下の3人に減らすことができた。今後はロボット1台を追加導入し、計4台で1時間あたり1000パックの生産をめざす。

    マックスバリュ東海のデリカ長泉工場で稼働している惣菜盛り付けロボット

1日最大6000パックの安定生産をめざす

 遠藤真由美執行役員商品本部デリカ商品統括部長は「デリカ長泉工場では指定のSKU・アイテムに従って1日5000〜6000パックを生産している。ロボット4台であれば最大6時間で生産できる」と語る。ただ、安定して生産するためには、多品種変量の段取り替えにスムーズに対応できるがカギを握る。

 工場では現在、安定生産に向けてロボットが仕様書どおりに見栄えよく盛り付けているか、重量が誤差の許容範囲内に収まっているかなどの要件定義を検証している。

 ロボットの導入効果は生産性向上や省人化にとどまらない。遠藤執行役員は「盛り付け作業は女性が多い。単純作業はロボットに任せて、女性が判断業務や価値のある仕事にチャレンジできる企業風土を育てていきたい」と語り、女性の活躍の場が広がることに期待を示す。

       記者発表会見では盛り付けのデモンストレーションを行った

シミュレーション技術を使い、短期間で開発

 惣菜盛り付けロボットはシステムインテグレーターのFAプロダクツ(東京都港区)とオフィスエフエイ・コム(栃木県小山市)、日本サポートシステム(茨城県土浦市)のほか、食品産業に特化したロボットシステムを開発するコネクテッドロボティクス(東京都小金井市)を中心に開発を進めた。

 ロボットは番重に入ったポテトサラダを所定の重量でつかみ、トレーに盛り付ける。製造ラインのスピードに対応するため、ロボットアームではなく、産業用のスカラロボットを採用した。先端に重量センサを搭載しており、重量偏差の範囲に収めて歩留まり良く盛り付けを行う。

 惣菜の製造は段取り替えが多いが、中パック、小パックなど盛り付け量の変更やポテサラ、マカロニサラダなどの品種の切り替えはタッチパネルで簡単に行える。さらにハンド部も着脱式にして、食材に合わせてすぐに切り替えられるようにした。

     ロボットの構成要素と、短期間での開発に貢献したシミュレーション画像

 今回のプロジェクトは経産省の「2021年度 革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」に採択された日本惣菜協会が主幹事となって進めた。予算事業のため開発期間は7カ月間と短かったが、FAプロダクツが持つ高精度の生産シミュレーション技術や、コネクテッドロボティクスが強みとするモーションコントロールとAIの組み合わせ技術を駆使して開発にこぎ着けた。

 経産省は今回の導入モデルをブラッシュアップして中小の惣菜メーカーに横展開する考え。2024年度までに社会実装をめざす。