連続蒸気炊飯システムの導入で品質向上

 小田急グループの各店舗に食材を提供している小田急食品(神奈川県座間市)は主力の米飯でガス釜から連続蒸気炊飯システム(エースシステム製)に昨年8月切り替え、12月から本格稼働した。加熱蒸気による殺菌効果が米飯の日持ちを向上させ、安定した仕上がりを維持している。冷めても硬くならない箸通しの良さも相乗して、消費者の反応も好調だという。

     岡崎副部長

 小田急系列のスーパー、コンビニ、小田急電鉄キヨスク向けに白飯、寿司飯、おにぎりをはじめ、麺、そば、豆腐を製造し供給。品揃えを充実させている。デイリーものの米飯は特に安定した生産が求められており、「蒸気炊飯だからこそ可能にする技術」と品質保証と開発を担当している製造部の岡崎靖副部長は語っている。しかし、導入にあたっては、釜炊飯に比べ蒸気炊飯は実績も知名度も低く、食材の受け入れ側である売場の理解を得るのに苦労したと当時を振り返る。
 連続蒸気による炊飯は、ごはんが黄色く劣化する原因となるヌカ油の酸化、雑菌の繁殖などの問題を解消する。米が膨張しはじめる時に十分に湯を散布するので、米ヌカなどを洗い流す。120℃を超える加熱蒸気を蒸射しているため、芽胞菌などの雑菌を滅菌する。釜では100℃以上にならず、芽胞菌が死滅しないため時間が経つとご飯が黄化してしまう。
 炊きあがり直後のごはんは釜炊飯に比べ、一段と白く、柔らかく仕上がる。ヌカによるご飯独特の匂いもなくなる。このため、従来通りに炊きあがるご飯のイメージを強く持っていた店舗側は理解を示さなかった。“ご飯にコシのない感じ”と受けとめられたという。しかし、岡崎副部長は「炊き上がりだけを判断するのではなく、最終商品を見てほしい」と求めた。
 ご飯が店頭に並び、実際に消費者のもとに届くのはこの数段階あと。蒸気で一粒一粒圧迫させずに、しっかりと炊き上げたご飯は加工や成型、盛り付け器での取り扱いが容易になる。ボックスで送った売場の作業効率が向上。消費者の口に入る際、冷めても硬くならず、箸通しが良いものが届く。殺菌効果で日持ちし、添加剤や保存料は不要だという。

連続蒸気炊飯システムの導入で品質が向上した

省人化・省スペースも

 連続蒸気炊飯システムはコンベアをたて3段階式に作りあげた箱型のクローズ構造。このため、ガス釜炊飯ラインと比べてスペースを1/3〜1/5縮小できる。自動洗浄機能を備え付けており、米をステンレス製ネットコンベアで搬送している。目詰まり防止をするため、本体に高圧洗浄機を取り付けており、釜洗浄ラインが不要になる。HACCP化(ゾーニング)にも柔軟に対応できる。
 操作性の良さも特徴の一つ。炊飯調整は炊飯時間(コンベア)の増減、蒸気量の増減、湯水散布量の増減で行ない、一度プログラムにセットした炊飯レシピは再現性が高く、誰が操作しても同じ炊飯が可能。「誰がラインに入っても同じ商品に仕上げることをデイリーものには求められている」(岡崎副部長)。
 米は浸漬タンクに入っている分すべてを供給して連続に炊き上げる。オペレーターが取り出しまでできるので、導入前までラインには3人が長時間常備していたが、一般的な作業は1人でできるようになった。
 機械販売窓口である双日マシナリーの佐藤博行産機システム機械グループ課長は「蒸気炊飯の歴史は浅く、実績もまだこれからだが、ユーザーが求める高品質のご飯に仕上げる自信がある。それは100点満点を出すという意味ではなく、誰が操作しても常に95点のご飯を作れるということ」と語っている。「テスト炊飯も行なっているので、まずは問い合わせてもらいたい」と更新を考えているユーザーに呼びかけている。
 白飯はもちろん、酢飯、塩飯、炊き込み飯にも対応しており、「赤飯にこそこの機械を活用してもらいたい」と佐藤課長は訴求する。小田急食品では、「ハレの日」のみ赤飯ラインを稼働させているが、「いずれは連日稼働させ、赤飯の外注にも応じたい」と意気込んでいる。

 フードエンジニアリングタイムス(FEN)2009年10月14日号掲載