給食の受注管理ソフト開発
食品卸と施設のマッチング機能搭載

 システム開発のカイテクノロジー(東京都新宿区、勝屋嘉恭社長CEO)は病院や高齢者施設、保育園などに累計1万5000件以上の導入事績を持つ栄養・給食管理ソフト「Mr.献ダテマン」シリーズから食品卸会社向けに新商品を近く発売する。

 施設や給食会社と食品卸の間で受発注・在庫管理データを連携させ、オンライン上でシームレスに受発注できるようにする。マッチング機能も搭載する予定で、施設側の仕入先の選択肢を広げるとともに、食品卸の顧客開拓にも貢献する。

 「Mr.献ダテマン」は献立の作成や栄養計算、食材の発注量の計算、在庫管理、保健所に提示する監査帳票の作成など煩雑な業務をワンストップでサポートする。食品標準成分表に基づいた自動計算はもちろん、アレルギー対応や減塩・低たんぱく質など栄養価の調整が個別に必要な献立の管理機能も備えている。

 「Mr.献ダテマン」の自動計算機能によって管理栄養士らの業務負担は大幅に軽減した。食材の発注量は献立の予定食数に食品の廃棄率を掛け合わせるなどして算出するが、こうした複雑な計算も自動で行ってくれる。

 星野和真取締役COO兼専務執行役員事業部門統轄は「施設は1日あたりのカロリーやたんぱく質などの摂取基準値を決めている。ソフトを活用すれば基準値に合っているかどうかがひと目でわかる」と語り、業務の効率化やミス防止に役立っていると説明する。

 業界でいち早く2016年にクラウド型をリリースし、コロナ禍によるリモートワークの拡大で導入件数が急増した。月額4900円(税抜)からと低額で利用できることも手伝って市場シェアはトップクラス。栄養士らの間で高い知名度を獲得している。

 サポート体制も充実しており、スタッフは多くが現場経験のある管理栄養士。施設側の質問の意図をすぐに汲み取って導入から運用まできめ細かくサポートするため顧客満足度は高い。実際、途中解約は少なく、99%を超える継続率を維持している(22年9月時点)。

  「Mr.献ダテマン」のトップ画面、柔らかいデザインで視認性と操作性を高めている

FAX発注からオンラインへ

 食品卸向けに開発中のソフトは施設との受発注業務をFAXでのやり取りからオンラインに切り替えて業務のムダやミスをなくす。星野取締役によるとFAX発注はいまだに多く、手書きのために電話による確認やデータ入力などの非効率的な作業が多いという。特に最低発注数量や発注単位に関する確認作業は頻繁に起きやすく、受発注データの共有が課題だった。

 今回のソフトは食品卸が作成した商品マスタ情報や見積書をデータ化して施設に提供し、施設側のソフトと連携させることで、必要な食材量の計算から発注までスムーズに行えるようになる。データ入力の作業が不要になり、発注単位の間違いも起こりにくくなる。さらに、受注から出荷までのリードタイムの短縮につながる。

 星野取締役は「高齢者施設はデイサービスなどを併設するところが増えており、利用者の変動によって食数変更が発生する。発注締め日が3日前から2日前に1日短くなるだけで、発注量を適切に調整できる」と語り、食品ロス削減が可能になるなど施設側にとってもメリットがあることを強調する。

PB商品の献立提案も可能に

「Mr.献ダテマン」のログイン画面、食品標準成分表の改訂にも対応しており、バージョン
アップして提供している

 外食産業の低迷を背景に高齢者施設給食に参入する食品卸は増えているが、通常の営業訪問では取り引きまでに時間を要する。今回のソフトはマッチング機能を搭載しており、食品卸が持つ商品や単価などの情報を一覧表示する。施設の管理栄養士がそれを見て取引きを申請し、食品卸が承認する仕組み。施設にとっては仕入先の選択肢が広がり、場合によっては食材のコスト削減も可能になる。食品卸は施設の新規開拓につながる。

 食材に限らず、完全調理済みの商品やPB商品の情報を発信することも可能で、これらを含めた献立の提案で差別化を図ることができる。最近は早朝のスタッフ確保が難しく、「多少単価が高くても朝食に完調品を使うケースが増えている」(星野取締役)。セントラルキッチン方式を採用する施設も増えており、同社のソフトは引き合いが強まっているという。食品卸にとっては顧客開拓につなげる格好の機会といえる。

 開発中のソフトは6月発売(価格未定)を予定している。